・・・



ここあは帽子をはずしたミュウを不思議そうに見つめていた。



「うん?どうしたのだ?我の顔に何かついておるか?」

「ぼうしをはずしたみゅうちゃんは、かみをきったにゃーこさんみたいです」

「にゃーこぉ?誰だそれは」

「にゃーこさんはいっしょにあそんでくれて、いろいろおしえてくれる、やさしいおねえさんです」

「ほうほう・・・」

「みゅうちゃんとはみみのいちも、ちがいますが、なんとなく・・・」



二人はそのにゃーこという人物の話で盛り上がる。
ここあが言うには、金髪で猫耳のロングヘアのお姉さんで、お尻に生えてる猫のしっぽに、赤いリボンを包帯のように巻いているのが特徴的らしい。
そして、ここあと同じく大切にしている主人がいるとのことである。
にゃーこは、頭の上に耳が生えてる感じだが、ミュウは人間やエルフの耳が生えてる位置くらいに耳がある。
似てる、というにしても髪の色くらいである・・・なぜ、ここあは似ていると思ったのだろうか。



「あと、おっぱいがけっこうおおきいんです・・・」

「ほほー・・・そんなに胸があるのか」

「ここあにもあったほうがいいのかな」

「胸のことなど気にしたことないのだ、主人はそれでも愛してくれたのだ!むしろそっちのほうがいいとか言ってたのだ!」

「な、なるほど・・・」

「我のこの身体が良いといっていたのだ、妖精を愛するとは、今考えれば物好きなやつだったのだ、なはは〜!」



・・・ミュウの主人は、なかなかの正直者というか、だめ人間だったようだ・・・。
胸があったほうがいいのか、悪いのか、という質問は・・・正直、正解がないといってもいい。
ミュウの返答は「愛している者がそれでいいならそれでいい」という感じの回答だった。
答えにはなってないかもしれないが、それが一番なのかもしれない・・・。



「それにしても、にゃーこという者はここあと同じでずいぶんと主人思いなのだな、情が強いことはいいことなのだ!」

「そうなんです!」

「その者と似ているとは、光栄なのだー!」

「でもみためだけです」

「・・・見た目だけ・・・て、我は優しくないといっておるのか!」

「そ、そういういみでは!」

「がおー!」

「わうー!」



ミュウはここあの顔に飛びかかった。とはいっても、本気で飛びかかった様子はなかった。
ここあはそのまま地面に倒れ、ミュウと一緒にごろごろと地面に転がる。
二人の笑い声が聞こえる。それはケンカというより、単なるじゃれ合いに見れた。



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ちゃんと、てかげんできてるじゃないですか
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フリスビーをやる時、ミュウは手加減の仕方がわからないと言っていた。
しかし、今のミュウを見ていると、しっかりと力を抑えてここあに飛びついていた。
普段はどちらかというと甘えている身のここあにとって、ミュウとの行動はとても新鮮なものであった。
まるで自分がお姉さんになったかのような・・・。そんな気分にみまわれていた。
先程、ミュウを見て、ここあはにゃーこを思い出していた。
その感覚と、妖精ではあるが、金髪で猫耳のミュウを見て、面影を感じるような錯覚のしたのだと思われる。



「なははっ、こんなに遊んで、話しをしたのは久しぶりなのだ・・・」

「そうなんですか?」

「我はいつもはずっと一人なのだ。こうしてたまに誰かと話すが、ここあみたいな気を合う者と会うのも稀なのだ」

「わう・・・」



ここあはこの時、自分の主人のことを考えていた・・・。
自分のご主人様がいなくなったら、ここあはどうするだろうか・・・。
それは考えるだけでも、とても寂しい気持ちになった。
ミュウは、大切な主人を失ってもなおこうして明るい顔を見せている。



「みゅうちゃんのごしゅじんさまは、どんなひとだったんですか?」

「ん・・・そうだな、我の主はな・・・」



なぜ、聞いたのだろう、失った主人の過去の話・・・。
それは、ミュウにはすでに亡き主人とはいえ、ここあやにゃーこが主人を大切に思っているという感情は、残っているからだ。
それ故に、ここあは聞きたくなったのだろう。ミュウの主人の存在を・・・。
人によっては、聞けば傷つけてしまうこともありそうだが、ミュウはそのことを関しては気にせず、話すことに抵抗はなさそうだ。
ここあは、ただ純粋にミュウの主人に興味を持った。だから聞いたのだろう。




ミュウは少し考えて、想い出を探っている・・・。
・・・何やら顔を少し赤くしている・・・。



「・・・?」



その様子を、ここあは寝転びながら不思議そうに見つめていた。
再びミュウは口をひらく。



「激しかったのだ」

「は、はげし・・・!?」

「うむ、だが・・・終わった後に頭をなでなでされるのが大好きだったのだ・・・」

「な、なんのはなしですか・・・?」

「・・・あっ・・・」



ここあは顔を赤らめている・・・。この反応は明らかに、ここあは理解していた。
『何の話しか』と聞いているが、それはとぼけているようにしか聞こえなかった。



「すまぬ、思い出した想い出がよりによって性行為の話とは・・・だが印象に残ってるんだから仕方ないのだ!」

「・・・・・・」

「な、なははっ、すまぬすまぬ!ここあにはこういう話はまだはやいか!わしは見た目よりは長生きしてるのだ!そういう体験もそりゃ・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「えっ・・・?」



・・・ここあを様子から察するに、まだ早いとかそんなものじゃなく
すでに『体験済み』のようだ・・・。顔を真っ赤にして目をそらしている・・・。



「・・・ほーう・・・」

「そ、そんなはんのうしないでください!」



ミュウは何やらよからぬことを企むような顔をするようにニヤニヤしている。



「・・・我が主はとても積極的だったのだ・・・初めてした時は主のほうからでなぁ・・・」

「あ、あのあんまりこういうはなしは・・・!」

「ここあはどっちからだったのだ?やはりその性格なら我と同じく主から・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「こ、ここあから・・・・・・」

「・・・意外なのだ」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「きゃーーーーー!!」

「きゃーーーーー!!」


二人して顔を真っ赤にし、ごろごろと地面を転がる。
ミュウはここあをからかうつもりだったのようだが、完全に自爆であった。
こっちまで恥ずかしくなってくるようなガールズトークに、二人は思わず悲鳴をあげてしまう。



「はぁ・・・はぁ・・・こ、こういう話はやめるのだ・・・」

「みゅうちゃんがしてきたくせに!」



ここあはもっともなツッコミをいれた。
そして、なんとか心を落ち着かせようと、二人はしばらく黙りこむ。
しばらく悶々としつつも、いつもの調子を取り戻していった・・・。
そうこうしているうちに、いつのまにかあたりは少しずつ暗くなっていき、綺麗な夕焼けが見えていた。



「もうこんな時間なのだ」

「そろそろかえらないと・・・ごしゅじんさまがしんぱいします。」

「うむ、そうするのだ」



二人は帰る準備をする。
ここあはトランプとフリスビーを一本樹に置いていたバッグに入れ、手に持った。
ミュウも、さきほど投げ捨ててしまったジャガーのかぶりものを頭につける。



「そうだ、これをやるのだ」

「わう?」



ミュウは呪文を唱え出す。
それは何かの魔法の呪文で、何を言っているのかはまったくわからない。
恐らく、ミュウの言うアステカ文明の言葉であるとは思えるが・・・。



「まほう・・・?」



呪文が唱え終わる。
ミュウの頭上が光り輝き、妖精の顔が隠れるくらいの小さな金貨がでてきた。
ミュウはそれを手にとり、掲げるように持つ。



「それは・・・おかね?」

「金とはちょっと違うのだ、これはアステカの金貨なのだ、今となってはなんの価値もないと思うのだ」

「あすてかの、きんか・・・」



お金ではないといっているが、金貨という時点で相当大きな価値があるはずである・・・。



「我しか知らない場所に、この金貨が大量にある場所があるのだ、そこに転移魔法の術式が繋がっていていつでもとりだせるのだ」

「てんいまほう・・・なんだかすごくべんりそうです」

「残念ながら転移場所は一箇所しか指定できないのだ、だからこの金貨を転送するだけの魔法、そこまで便利でもないのだ」

「わう・・・」



難しい話になってしまったか、ここあは少し頭を熱くしてしまう。
こういう話はとことん苦手そうである。



「・・・我が主は『信頼した相手』にはこうしてアステカの金貨を1枚渡していた。我はそれのマネをしているだけなのだ」



今の言葉はつまり、ミュウはここあを信頼しており、これからも友達でありたいという意味を表していた。



「受け取ってくれ」

「・・・わかりました!」



ここあは、アステカの金貨を受け取った。



「我はここあを信頼するのだ!」

「おともだちになるってことですね?」

「そういうことなのだ!・・・いい、かな?」



断る理由なんてどこにもないはずだ。
しかしそれでも、ミュウは少し不安そうな顔をしてここあの顔をのぞき込んだ。



「もちろんです!」

「・・・えへへ」



ミュウは、今までのように胸をはって笑う感じではなく
照れくさそうに小さく笑って、笑顔を見せた。



「気が向いたらまたくるのだ、ありがとう、ここあ、楽しかったのだ!」

「こちらこそありがとうございます!またあそびましょう!」



日がくれてゆく。太陽の日が消えてゆく。
それと同時にミュウは静かに空を飛んでいき、姿を消した・・・。



「なんだか、たいようみたいなようせいさんでした」



ここあは、ミュウとの出会いを思い出しつつ、ゆっくりと、主人の待つ家で戻るのであった・・・。



・・・



「ただいま、ごしゅじんさま!」



元気な声で、ドアをあける。
そこには笑顔でここあを迎える主人の顔があった。



・・・



食事をしながら、今日は何があったのか、何をやっていたのかを楽しく話すここあの姿。
主人はそれを少々苦笑いしながら聞いていた。



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ごしゅじんさまに"ようせいさん"がいる!
っていってもしんじてもらえません・・・
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しかし、それも今に始まったことではないらしい・・・。
主人はいつもの調子でここあと話をあわせていた。
そのまま時は経ち、食事もすませ、お風呂もすませ、あとは寝るだけとなった。



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ごしゅじんさまに、"ようせいさん"をみたんだよっていったら
だっこしていっしょにねてくれました!・・・うれしいけどなんかちがう
でも、ここあは、ほんとうにみたんです。
"ねこみみのようせいさん"を・・・
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ここあは、主人の横で静かに寝息をたてながら
日記を書くように眠りについていった。
おやすみなさい、ここあ。



おわり。