「みゅうちゃん、あそびませんか?」

「ほう?遊びか、良いぞ!」



ここあはミュウと遊ぶという提案を出し始めた。



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みゅうちゃんは、げんきそうにふるまっているけど
どこかさびしそうです・・・。げんきにしてあげます。
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ここあはそのようなことを考えていた。
なぜそのような考えになっているかは、もちろん理由はあった。
話した話題の中に、どこに住んでいるかという話題がでたのだが
どうやらミュウの故郷はすでになく、今は別の場所になっているという話なのだ。
恐らく、それがアステカ文明というものだったのだろう。文明は完全に滅んでしまっているようだ。
人によってはおせっかいかも知れないが、ここあの優しさが伝わる考えであった。ここあかわいいよここあ。



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ちょうどあそびあいてもいなかったしよかったです!
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・・・どちらかというとそっちの考えのほうが本命な気がした・・・。
とにかく、今の退屈をしのげればよいという考えも混じっているようだ。




「何をして遊ぶのだ?狩りか!対戦か!」



ミュウは腰につけていた棍棒を抜き、ぶんぶんと振り回した。



「そ、そういうのはちょっと・・・」

「むう、ならどんな遊びなのだ?」



ミュウの言う遊びというのはなかなかアグレッシブなようだ・・・。
別の遊びが思いつかないように、首をかしげてここあを見つめる。
ここあはどう考えても一般人であり、ミュウのような戦闘バカとは違う。
互いに考える「遊び」はまったく別物のようである・・・。



「ふりすびーとかどうですか?」

「フリスビー?その手に持っている武器のことか?」

「ぶきじゃないです・・・」



どうやら根本的なことからわかっていないようだ・・・。



「これをじめんにおとさないようになげあってあそぶんです」

「ほうほう」



ここあは、ミュウにフリスビーでの遊び方を教える。
ミュウは興味深そうにその話を頷きながら聞いた。
まるでここあがお姉さんのようだ。



「なるほど!わかったぞ!」

「でも、みゅうちゃんにできるかどうか・・・そのからだじゃ」

「大丈夫なのだ!」



ゴトッ!



ミュウは手に持っている棍棒を地面に落とした。
身長の二倍近く、ということは40cmほどあると思われるその棍棒は
明らかにフリスビーより重いものであった。



「普段からこれを持っているのだ、それくらいのもの、いくらでも受け止められるのだ!」

「すごいです・・・ようせいさんなのにちからもちです」



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なんだかすごいおとがしました。
みためいじょうにおもそうです・・・。
・・・ほんとうにようせいさんなのかな?
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妖精の持っているものだから、もっと軽いものだと想像していたみたいだがそんなことはなかったようだ。
その棍棒は、人間が普通に使ってもおかしくない重量と大きさだ。
ミュウはそのようなものを身につけてなおかつ飛んでいたということになる。
本当に妖精なのか、ここあがそう思ってしまうのもおかしくはないほどであった・・・。



・・・



二人は荷物を一本樹に置き、身軽にしてから配置につく。
十分な距離をあけてフリスビーをやる準備を整えた。



「いきますね〜〜」

「お〜う!!」



二人はなるべく大きい声をあげて、互いに声が届くように呼びかけた。
ここあはミュウに声が聞こえたことを確認すると、身体を捻って、フリスビーをミュウの方向にうまく飛ぶように投げとばした。



ヒュンッ!



「あれを受け止めればいいのだな!」

「わぅ・・・ちょっとなげすぎました・・・」



ここあの投げたフリスビーはまっすぐに飛んでくるが、どうがんばってもとれないくらいの高い位置を飛んでおり、
そのままミュウの頭上をすぎていく。しかしミュウは、それに素早く反応して後方に素早く飛び、フリスビーを追った。



「よっと!」



見事な空中キャッチを決め、素早く旋回してその場に留まる。



「わう♪ないすきゃっちです!」

「楽勝なのだー!」



ミュウは自慢げにポーズをとる。
ここあはあらぬ方向に投げたことを悔やむことなど忘れ、ミュウが見事なキャッチをしていることに驚き、感動を見せていた。



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なにごともなくたのしくあそべそうです♪
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ここあは自然と笑顔をつくる。
フリスビーをして遊べることが嬉しいということが、その顔によくでていた。



「いくぞーーー!!」

「は〜〜い」



ミュウがフリスビーを投げようと身体を捻る。
ここあはそれに対応するために、笑顔を維持しつつも少々真剣な表情で身構えた。



ブオォンッ!!



・・・



それは明らかに、フリスビーを投げるような音ではなかった・・・。
まるで何かのエネルギー波のような音を出して、フリスビーはここあに超高速で飛んでいく。



「えっ・・・?」



ここあはまったく反応できなかった。フリスビーはここあには命中しなかったものの
ここあの耳の横を通り過ぎ、毛が5〜6本ほど切れ、ぱらぱらと落ちた・・・。
フリスビーはそのまま飛んでいき、遙か遠くで地面に・・・刺さった。



「どうしたのだ!ちゃんと取らぬか!」



ミュウはここあに駆け寄った。



「ここあ・・・?」

「・・・・・・」



ここあは真っ青な顔をして固まっていた。
心なしか目を少しうるうるさせている。
よく見たら足もがくがくとしている。
耳もぺたんと垂れさせ、完全に怯えているようなしぐさをしている。
よっぽど怖かったようだ・・・。



「ほんきでなげたら、だめですよ・・・?」

「そうなのか!?武器は全力で扱うものだろう!?」

「ぶきじゃないです・・・」



震えるような声でデジャヴを感じる台詞を言うここあ・・・。
あまりしゃべると目から涙がこぼれそうな雰囲気であった。



「・・・むう、手加減はしたことないから加減はわからんのだ・・・」

「そ、それなら、べつのあそびにしましょう・・・」

「む、そうか・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・すまぬ・・・」



少し会話に間が空き、次に、ミュウの謝る言葉、空気が少し重くなってくるのを感じた。



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みゅうちゃん・・・
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さっきまで元気だったミュウは、途端に困り顔になり、ここあと目を合わせられないでいる。
あった時から、ずっと笑顔を見せていた妖精に、そのような顔は似合わなかった。
その様子を見てここあは、どうすればいいかを知恵を振り絞っていた。



「きにしないでくださいみゅうちゃん」

「むう、しかし・・・」

「できないことはゆっくりおぼえていけばいいです」

「・・・そうだな、すまぬな、ここあ、ちょっと難しそうだがやるぞ!」

「で、でもふりすびーはもういいです」

「えー・・・」



ここあはミュウを落ち込ませたくない一心で、背中を押すように言葉を出すが
あんな目にあってしまったのでは、もう一度やろうという気になるのは早々ないだろう・・・。
押しておいて続きをやらないのは、それ以上に恐怖を感じてしまっているものだからと思えた。
怖かったのなら、仕方ないね・・・。ミュウは少し残念そうな声をだしていた。



「このほかにもおもしろいあそびはありますから、そうしましょう」

「ふむ、ならばそうするのだ」



しかし、ミュウの見せていた落ち込んだ気持ちはいつのまにかなくなっているように見えていた。
ここあはその様子を見て、にこっと笑う。機嫌を治してもらえたことが嬉しいようだ。
二人は、次の遊びのために準備を進めた。



・・・



遠くで地面に突き刺さっていたフリスビーも無事に回収し
荷物を置いていた一本樹に集合した。フリスビーは壊れてなかった、頑丈すぎるだろう・・・。



「では、何をするのだ?」

「こんなときのためにもってきておいてよかったです」

「おお?」



持ってきていたバッグをごそごそとし、小さなケース箱を取り出す。
ここあはさっそく取り出したその箱を開けると、カードがでてきた。
でてきたものはトランプだった。



「とらんぷです」

「トランプ?」



ミュウは首かしげてトランプと呼ばれるカードを見つめる。
どうやらトランプのこともよくわからないと言った表情だ。



「このかーどでですね」

「ふむふむ」



ここあは、一通り、どんな遊び方ができるのか、どういう方法で遊ぶのかを説明していく。



「ばばぬき、ぽーかー、すぴーど・・・」

「ポーカーとかスピードとかよくわからんのだ、ババ抜きでいいのだ!」

「うっ・・・ばばぬきはちょっとにがてです・・・」

「そうなのか?大丈夫なのだ、我ははじめてやるからそれだけハンデなのだ」

「んー、そうかもしれません、やります?」



ここあは、ババ抜きにはあまり良い想い出はないのだろうか、ほとんど勝ったことがないような言い方をしていた。
しかし、今回はミュウも一度もやったことがないということで、練習という意味もかねて、ババ抜きをやる提案を受け入れた。



・・・



「まずはかーどをはんぶんずつ・・・」

「おー!」

「5回勝負くらいにします?」

「うむ、それくらいなら練習も含めてちょうどよさそうなのだ!勝負なのだここあ!」



ミュウはその小さな身体で両手いっぱいにカードを持つ。
妖精にとってそれは相当な握力が必要そうであるが、ミュウに関しては大丈夫そうであった。
ここあに上から覗かれないように、ちょうどいい位置を飛びながらトランプ少し掲げるように持った。



「この道化の者が描かれたカードを残したら負けなのだな?」

「じょーかーはそっちにあるようですね・・・」



互いに手札を隠している状態で、そういう宣言をするのはどうかと思うが・・・
二人でやっている以上、そういう問題はなさそうであった。



「ここあ、このカードをとるのだ」

「わう?」



パッ



・・・



ジョーカー。



「よし!」

「・・・・・・」



ここあは少しムッとした顔をした。疑うことを知らないのだろうか、それとも騙されるとは思わなかったのだろうか。
ミュウはさっそくルールを理解しはじめているようだ・・・。先が思いやられる展開となっていた・・・。



・・・



ここあは左のカードをとろうとする。



「にやー・・・」



ここあは右のカードをとろうとする。



「くっ・・・」



パッ



「があー!負けたー!」



その後、バチがあたったのか結局ジョーカーはミュウの手元に戻ってきてしまっていた。
ミュウのカードは残り二枚だったが、ジョーカーを一枚残して、敗北が決定してしまった。



「くそぁ!もういっかいなのだ!」



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すごくわかりやすいです・・・これはかてるかも!
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ここあは今までにないわかりやすい相手に
「勝てるかもしれない」という気持ちがでてきたのか、実に楽しそうな顔を見せていた・・・。



・・・



二試合目。



さっきとはまったく逆の状況で、ここあにカードが二枚、ミュウにカードが一枚残った状態になった。
ミュウは右のカードをとろうとする。



「わう・・・♪」



ミュウは左のカードをとろうとする。



「ぅ・・・」



パッ



「ばばぬきはむずかしいです・・・」

「な〜〜はっはっは!ちょろいのだ!」



・・・お互い様であった・・・。
ひどいレベルでバランスがとれている。



・・・



・・・



そんなひどいを繰り広げ、互いに2勝した状態で
最終試合となった。もはや、心理戦とかは関係なく完全に運で左右されているこの試合の中で
ミュウのほうにジョーカーがきていた。



「ぬぐぐぐぐ・・・」

「こっち」

「ちょ、ま・・・あー!」



ここあはミュウの顔を見てあっさりと見抜き、ジョーカーをよけて手札を揃える。
これによりここあは3勝2敗で勝負を決めた。



「くそー!負けたー!!」



勝負に負けていらだち、怒りをぶつけるように頭につけていたジャガーのかぶりものを地面に投げ捨てた。



「ばばぬきでかったのはじめてかもしれません・・・」

「ちくしょー!くそー!くそぁ!くそぁー!」

「お、おちついて・・・!」

「わ、わかっておるのだ・・・ぬう、負けは負けなのだ・・・」



ミュウはどんなことでも勝負は負けたくない性格のようだ。
存分に怒った次は少し、シュンとした・・・。



「みゅうちゃんもつよかったですよ、つぎやったらまけそうです」

「ここあ・・・うむ、次は負けないぞ!いい勝負だったのだ!」



ここに、二人以外の人物がいれば、即座にこうツッコミをいれるだろう・・・。
『どっちもどっちだ』と。『これはひどい勝負』と・・・。